BMW 7シリーズに試乗|BMW
BMW 7 Series|ビー・エム・ダブリュー 7シリーズ
BMW 523d BluePerformance|ビー・エム・ダブリュー 523d ブルーパフォーマンス
BMWフラッグシップ
あたらしくなった7シリーズに試乗
BMWが誇る最上級サルーンである「7シリーズ」。マイナーチェンジで搭載エンジンの変更がおこなわれた。特にかわったのは、先代とくらべてスペック数値だけで見ればパワー削減となった「アクティブハイブリッド7」。それを含め新型7シリーズはどのようなキャラクターに生まれかわったのか。大谷達也氏の見解はこうだ。
Text by OTANI Tatsuya
Photographs by ABE Masaya
高級車ってなんだろう?
高級車に求められる要件って、なんだろう?
いまどき「高級車」なんて言葉は流行らないから、「ラグジュアリーサルーン」と言いかえても構わないが、それだとちょっとニュアンスがちがってくる。
やっぱり、ここは高級車でとおすことにしよう。
高級車の要件は、大きくわけてふたつあるようにおもう。ひとつは、クルマ自体が高級車の名にふさわしいこと。つまり、内外装のデザインや仕立てが上質で、室内スペースが広々としていて、静かで、乗り心地がよく、動力性能に余裕があること。最近は、これに環境性能なんて基準もくわわってくる。
もうひとつの要件は、クルマそのものというより、クルマがもつ社会的なメッセージやポジションに関係しているような気がする。つまり、クルマは好むと好まざるとにかかわらずひと目に触れ、オーナーなりドライバーなりの嗜好や社会的立場をつたえる役割を果たす。
そのメッセージが正しいかどうかはさておき、「なんだ、あの人はあんなクルマに乗っているんだ」というネガティブなイメージを与えることもあれば、「さすが、あの人がえらんだクルマだけのことはある」というポジティブな共感を呼び起こすケースもある。もっと現実的な話をすれば、たとえば高級ホテルに乗りつけたとき、本当にいいクルマとそうでもないクルマではホテルマンの扱いがちがってくることがある。
言いかえれば、誰もが認める高級車に乗ることで、あなたのラグジュアリーライフがより充実したものになることだってありうるのだ。
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あたらしくなった7シリーズに試乗(2)
「ツインパワーターボ」化の恩恵
BMWのフラッグシップサルーン、つまり同社の代表的な高級車である「7シリーズ」がマイナーチェンジを受けた。
今回の主眼はパワープラントの変更。たとえば、「740i」に搭載される3.0リッター直列6気筒エンジンを、従来の直噴ツインターボからツインスクロールターボチャージャー、高精度ダイレクトインジェクション、バルブトロニックを採用した最新世代のツインパワーターボエンジンとすることで、従来モデルにくらべて48パーセントの燃費改善を果たし、JC08モードで12.1km/ℓを達成している。
ところで、BMWの「ツインパワーターボエンジン」という名称について誤解はないだろうか? ツインパワーターボとは、直噴技術とバルブトロニックもしくはVANOS(可変バルブタイミング技術)を組みあわせたターボエンジンのことで、「シングルターボ」や「ツインターボ」のようにターボチャージャーの数をあらわすものではない。
ちなみに、前出の新型3.0リッター直列6気筒エンジンはツインパワーターボ化にともない、ターボチャージャーの数は従来の2基から1基に減っている。この影響かどうか、最高出力は326ps/5,800rpmから320ps/5,800rpmへとわずかに減少。
いっぽうの最大トルクは450Nm/4,500rpmから450Nm/1,300-4,500rpmに改められ、より幅広い回転域で最大トルクの450Nmを発揮するようになった。
いっぽう、「750i」に搭載される4.4リッターV型8気筒ターボエンジンは、あらたにバルブトロニックを搭載することで晴れてツインパワーターボエンジンの仲間入りをはたしている(こちらのターボは2基)。
この結果、3.0リッター直列6気筒エンジンとは対照的に、最高出力は407ps/5,500rpmから450ps/5,500rpmへと明確に向上。最大トルクも600Nm/4,500rpmから650Nm/2,000-4,500rpmへと引きあげられた。
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あたらしくなった7シリーズに試乗(3)
エンジンからモーターへ
前述したふたつのモデル以上に大きな変更をうけたのが「アクティブハイブリッド7」である。
2年前におこなわれた7シリーズのフルモデルチェンジとほぼ同時に発売された“初代”「アクティブハイブリッド7」は、449ps/5,500-6,000rpmと650Nm/2,000-4,500rpmを発揮する4.4リッターV型8気筒ツインターボエンジンを積んでいたが、今回登場した“新型”アクティブハイブリッド7は740i用と基本的におなじ3.0リッター直列6気筒ツインパワーターボエンジンを搭載。この結果、エンジン単体の最高出力は320ps、ハイブリッドのパフォーマンスを含めたシステム出力でさえ354psと、初代のアクティブハイブリッド7を大きく下まわることになった。
しかし、最高出力と最大トルクの減少にばかり目を奪われていると、“新型”アクティブハイブリッド7の本当の意味を見誤ることになる。エンジン本体のパフォーマンスは引きさげられたが、モーターの最高出力と最大トルクは20psから54psへ、そして160Nmから210Nmへと大幅に強化。
この結果、エンジンとモーターの“力関係”を計算すると、先代では最高出力の4.5パーセント、最大トルクの25パーセントだったものが、新型では最高出力の17パーセント、最大トルクの46.7パーセントとなり、モーターの役割が大幅に増加していることに気づく。
つまり、システムパワーに占めるモーターの比率をより高めることで、ハイブリッドシステムによる燃費改善効果をより明確に打ちだそうとしたのが新型アクティブハイブリッド7なのである。
「新型アクティブハイブリッド7」に試乗すると、電動化の影響をはっきりと感じることができる。じつは、3.0リッター直列6気筒エンジンとハイブリッドシステムの組みあわせは、8段オートマチックトランスミッションを含めて同社の「アクティブハイブリッド5」や「アクティブハイブリッド3」とまったくおなじ。ところが、新型アクティブハイブリッド7は、巡航時などにすっとアクセルを戻すと瞬時にエンジンが停止し、惰性で走る「コースティング」もしくはモーターの力で走る「EVモード」に切りかわるのだ。
エンジンが停止する頻度は、「ドライビング・パフォーマンス・コントロール」のモード切りかえによって大きくかわる。このうち、燃費最優先の「ECO PROモード」がもっとも頻繁にエンジンを停止し、「コンフォート」、「コンフォートプラス」、「スポーツ」、「スポーツプラス」の順にその比率は下がっていく。エンジンをより多く止めたほうが燃費改善の効果が大きくなることはいうまでもない。
ただし、エンジンのオン/オフを頻繁に繰りかえせばそれだけショックがつたわる可能性も増えるし、メカニズムにも負担がかかる。それでも、アクティブハイブリッド5ならびにアクティブハイブリッド3の開発を通じ、ハイブリッドシステムの制御技術が進歩し、システムがもつ信頼性の高さが確認されたのだろう。
いずれにせよ、おなじハイブリッドシステムを用いているにもかかわらず、運転感覚が大きくことなることには驚きを禁じ得なかった。
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あたらしくなった7シリーズに試乗(4)
100年前からかわらない、高級車の条件
エンジンを頻繁に止める設定は、燃費にくわえてもうひとつのメリットを生みだした。
エンジンが止まった瞬間に訪れる静寂が、アクティブハイブリッド7のキャビンに得も言われぬ快適性をつくり出すのだ。優れた静粛性が高級車の代名詞となることは、ロールスロイス「シルバーゴースト」が誕生した100年以上前からまったくかわっていない。いやいや、エンジンがかかっているときのアクティブハイブリッド7が騒がしいというつもりは毛頭ない。
それでも、エンジンがかかっているときとかかっていないときのちがいは明確に意識される。しかも、エンジンが停止しているときの静寂さには、どうやら中毒性があるらしく、この心地よさを一度おぼえると、エンジンがかかるたびに軽い落胆をおぼえるようにさえなってしまった。この結果、エンジンがいちばんよく止まる「ECO PROモード」が、私にはもっとも高級感の強い走行モードと感じられるようになったのである。
JC08モードで14.2km/ℓの省燃費を達成した新型アクティブハイブリッド7だが、ドライバビリティにも不満はなかった。発進直後の微低速でモーターが力強く後押ししてくれるのはもちろんのこと、フルスロットルにすればブーストモードとなってエンジンとモーターが全力をふり絞り、侮りがたいダッシュ力を発揮する。くらべてみれば、さすがに450psを発揮する
「750i」にはかなわないだろうが、アクティブハイブリッド7は高級車に求められるパフォーマンスを十分に備えていた。
また、優しいなかにも節度のある乗り心地、2トンという車重を若干意識させられるとはいえ、ドライバーズカーとしての本質を見失っていないハンドリングなどは、さすがBMWと感心させられた。
エクステリアは、新世代のBMWデザインのなかでもっともプロポーションが良好。控えめななかに知性と高品質感がじょうずに表現されているようにおもう。これだったら、どんな高級ホテルに乗りつけても恥ずかしくないだろう。
BMW7シリーズは、高級車に求められる質の高いハードウェアを得ているだけでなく、これまで見られなかった手法により、オーナーがラグジュアリーライフを満喫できるよう工夫されている。それが「BMWクラブコンシェルジュ」である。
これは、予約困難な名店での食事、国内名門ゴルフコースでのプレー、自宅で極上グルメを楽しむための一流料理人派遣、豪華客船クルーズ旅行の手配などを請け負う会員制のコンシェルジュサービス。基本的に7シリーズを購入したオーナーのみが入会でき、入会金および初年度の年会費は無料になるという(2012年末までは「6シリーズグランクーペ」オーナーも加入可。2年目以降の年会費は12万6000円)。
こういったサービスが考案されるのも高級車ならではといえるかもしれない。
今回は、「320d」とおなじ2.0リッター直列4気筒直噴ディーゼルターボエンジンを搭載した「523d」にも試乗できた。
車重は320dの200kg増しながら、380Nmの最大トルクは5シリーズのボディを軽快に加速させていく。静粛性にも不満なし。
しかも価格は633万円。BMWが標榜するEfficient Dynamicsを実に的確に表現したモデルだ。
BMW ActiveHybrid 7|ビー・エム・ダブリュー アクティブハイブリッド7
ボディサイズ|全長5,080×全幅1,900×全高1,475 mm[全長5,220×全幅1,900×全高1,485 mm]
ホイールベース|3,070 mm[3,210 mm]
トレッド 前/後|1,620 / 1,630 mm
最低地上高|150 mm
トランク容量|360リットル
重量|2,080 kg[2,140 kg]
エンジン|2,979cc 直列6気筒 直噴DOHC ツインスクロール ターボ
最高出力| 235kW(320ps)/ 5,800 rpm
最大トルク|450Nm(45.9kgm)/ 1,300-4,500 rpm
モーター最高出力|40kW(54ps)
モーター最大トルク|210Nm(21.4kgm)
システム最高出力|260kw(354ps)
システム最大トルク|500Nm(51.0kgm)
トランスミッション|8段オートマチック
駆動方式|FR
サスペンション 前|ダブルウィッシュボーン コイルスプリング スタビライザー付
サスペンション 後|インテグラルアーム式エアスプリング スタビライザー付(セルフレベリング機能付)
タイヤ 前/後|245/45R19 / 275/40R19
燃費(JC08モード)|14.2 km/ℓ
価格|1,198万円[1,338万円]
*[]内はActiveHybrid 7 Lの数値
BMW 523d BluePerformance|ビー・エム・ダブリュー 523d ブルーパフォーマンス
ボディサイズ|全長4,910×全幅1,860×全高1,475 mm
ホイールベース|2,970 mm[3,210 mm]
トレッド 前/後|1,600 / 1,625 mm
最低地上高|140 mm
トランク容量|520リットル
重量|1,760 kg
エンジン|1,995cc 直列4気筒 DOHC ディーゼル ターボ
最高出力| 135kW(184ps)/ 4,000 rpm
最大トルク|380Nm(38.7kgm)/ 1,750-2,750 rpm
トランスミッション|8段オートマチック
駆動方式|FR
サスペンション 前|ダブルウィッシュボーン コイルスプリング スタビライザー付
サスペンション 後|インテグラルアーム式コイルスプリング スタビライザー付
タイヤ|225/55R17
燃費(JC08モード)|16.6 km/ℓ
価格|633万円